『会社の目的は利益じゃない』誰もやらない「いちばん大切なことを大切にする経営」とは

こんにちは 市川弘美です。

今日は「いちばん大切なことを大切にする」をテーマにお届けします。経営で「いちばん大切なのは人だ」という話はよく聞きます。それを理論だけではなく、本当に人を大切にし「社員のやりがいがすべて」と言い切る経営者の著書をご紹介します。

多くの会社では、「人がいちばん大切」と言いながらも、人をいちばん大切にはしていないと著者は述べています。人を大切にするとは、給与や福利厚生を良くすることではないとのこと。社員の人間力を高めることや幸せになれること、そしてやりがいを持てることなどを重視していると書かれています。

また著者の経営する「ネッツトヨタ南国」の注目すべきは、人材の育成よりも「採用」を重要視しているところ。同社では、採用人数は5~10人ほどで、採用費に年間1000万円以上をかけるそうです(本書は2013年7月31日刊行)。求職者には何度も会社に足を運んでもらい一人に合計30時間の時間をかけて徹底的に話をします。

人気業種ではないがゆえに、仕事そのものに魅力を感じた人が来てくれて、本当に入社したい人だけが残るそうです。30時間という回数が多く長い期間の面談で、途中で嫌になった人は自然と来なくなります。採用費は10年間で1億円。なぜ、そこまで「採用」が大事なのかは、ぜひ本書を手に取って確かめていただければと思います。

見出しにもある「社員のやりがいがすべて」の言葉どおり、数字を追い求めることは一切しないで、いかに社員が自主的に動き、仕事にやりがいを感じられるかを重視した経営をしておられます。「今の一台より、将来の一〇〇台」という考え。飛び込み営業を全面廃止し、既存顧客の満足度を上げるサービスに重点を置いています。定期点検やオイル交換などの車のメンテナンスで、「来店」で売り上げを上げる方式です。

また、店舗数を増やすことはしないで、店舗の「質」で勝負するという強い信念をお持ちです。

そんなに社員のやりがい重視で、業績を上げられるのか? どんなにやりがいを感じても、もしも肝心の数字が出なければ、社員に給与は払えず社員は幸せになれない。こんなふうに考える人も少なくないと思います。

そこは、「量より質を上げる」経営を貫き、万事において徹底されています。全くブレがないのです。まさに「いちばん大切なことを大切にする経営」について、著者自身の考えと、人を大切にするというのはどういうことか、が書かれています。

 たいていの人は「社員をいちばん大切にして、次にお客様、そして業績を三番目にするという考え方でやれば、業績が上がる」と考えているのです。
ということは、結局その人がいちばん大事なのは業績なのです。
つまり「社員を大切にする」ということが方便になってしまい、「業績を上げたいから、社員をいちばん大事にいしよう」と考えているのです。
『会社の目的は利益じゃない』 横田英毅著 あさ出版 より

私は家族に当てはめて考えてみました。「家族が一番大事」とは言うものの、家族との約束の日に仕事が入れば仕事を優先するときもあります。夜は家族団らんよりも、原稿執筆を優先するときもあります。このとき「ひいては家族のため」だという言い訳をしているのです。
夫や息子が「生きがい・やりがい」を持ち、生きてほしいことは願っています。けれども「家族が生きがいを持つことがすべて」と言い切ることは私にはできません。会社と家族は違うという考えもありますが、家族は社会の縮図ですので、会社経営というのは家庭運営にも通ずることがあると私は思っています。
私にとって一番大切なものは何か? 本当にそれを大切にしているのだろうか? とても考えさせれました。

「人を大切にする」真の意味とその実践の仕方、いかにして顧客満足度を上げてきたのかなど、経営者のみならず個人事業主にとっても参考にできることや、やってみようと思えることが多く書かれています。単なるノウハウなのではなく、なぜそれが良いのかという著者の考えに深く納得できる1冊です。

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